06年12月1日付「聖教新聞」


池田SGI会長と
IAEAエルバラダイ事務局長が会談



池田SGI(創価学会インタナショナル)会長は11月30日午後1時半すぎ、国際原子力機関(IAEA)のモハメド・エルバラダイ事務局長一行を東京・信濃町の聖教新聞社に歓迎。核兵器なき世界を展望し、約1時間にわたり会見した。事務局長は、核兵器の軍縮・不拡散、原子力の平和利用の推進などに一貫して尽力し、国際的なリーダーシップを発揮してきた。その貢献により、IAEAと共に、2005年度のノーベル平和賞を受賞している。席上、事務局長に創価大学の名誉博士号が授与された。

今、国際社会に生きる私たちにとって、最も大きな脅威の一つが核兵器の問題である。核軍縮と核の不拡散へ、世界の先頭に立って、粘り強い対話を続けるのが、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長である。「『世界平和の大建設者』であられる事務局長にお会いでき、大変に光栄です。激務は存じ上げております。どうか、お体を大事にしていただきたい。ご多忙のなか、本当にようこそ、お越しくださいました!」と池田SGI会長。エルバラダイ事務局長は、「私のほうこそ、お会いできて、うれしいです!池田会長のことは、よく存じ上げております」と顔をほころばせた。席上、事務局長の「世界平和の構築のための多大な貢献」を讃え、創価大学の名誉博士号が、若江学長から授与された。事務局長は授章に感謝し、「同じ人類の一員として連帯し、平和と自由のために行動していきたい」とあいさつした。


池田SGI会長 核兵器は、地球上で最も手強い凶器です。その脅威に立ち向かっている事務局長こそ、最も勇気ある「平和の大英雄」です。核兵器の軍縮も、核の不拡散も、人類にとって、最も対処が難しい課題です。その難問に挑んでいる事務局長こそ、最も智慧ある「正義の大賢者」です。

――SGI会長の声には力がこもっていた。人類を代表して、核の脅威という困難に立ち向かう事務局長への尊敬と賞賛にあふれていた。事務局長の顔が、すぐに紅潮していくのが分かった。

エルバラダイ事務局長 ご親切な言葉をいただき、恐縮です。私は平凡な人間であり、他の人とまったく変わりはありません。ただ、私は、自分の良心と良識に従って生きてきました。私は、何か難解で高度な話をしたいわけではなく、私が訴えたいことは、「すべての人間が人間として遇されないかぎり、世界平和は達成できない」ということです。これが我々の唯一の生存の道なのです。


「我と彼」でなく「我々」の発想を

会長 正しいです。すべては、人間自身の問題であり、人間を変えるしかない。だからこそ、私どもも、人間革命を訴えています。

事務局長 その概念は、さまざまな国の哲学や宗教でも、違った言葉で表現されています。一つの非常に簡潔で明瞭な考え方は、「一人一人の人間に尊厳が認められ、人間らしい生活が保障されなければならない」ということです。それが守られれば、紛争はなくなります。人類は、これまで何度も戦争を経験してきましたが、また同じ過ちを繰り返すならば、世界平和は達成できません。

会長 その通りです。平和を探求する創価大学はもとより、アメリカ創価大学の全学生、全教職員も、広島・長崎をはじめ、平和を願う1000万の友も、そして世界190カ国・地域の同志も、心から、事務局長の貢献に感謝しています。皆さまを支持しています。次回は、ぜひ、創価大学を訪問され、学生たちに講演をお願いします。

事務局長 ありがとうございます。最近、アメリカで1枚の絵画を入手しました。その絵画は、「戦争がないことが平和なのではない」という概念を伝えようとしたものでした。争いがないことが必ずしも平和ではない。というのも、私たちは、それぞれの「差異」ばかりを強調し、「共通点」を見落としがちです。常に「我ら」と「彼ら」という立て分けをして、物事を見がちです。すべての人間を含めて「我々」という言葉で語ったときにのみ、初めてお互いの間に平和が実現するのです。自分自身の平和も獲得できます。

会長 大変に深い洞察です。感銘しました。私たちの信奉する仏法では「異体同心」と説きます。体は別々でも、また民族や言語や肌の色がいかに違っても、人間は、一つの崇高な理想に向かって、心を合わせることができる――と教えているのです。この人類の大連帯の哲学に立脚して、我々は、世界平和へ進んでいます。

――事務局長は、エジプト生まれ。64歳。カイロ大学法学部を出て、1964年にエジプト外務省入り。ニューヨークの国連代表部などに勤務し、1984年からIAEAへ。97年にIAEAの事務局長に就任。2001年、2005年に再選され、現在3期目。「ミスターIAEA」とも呼ばれ、国際社会が連携して核の脅威を排除していく協調的な枠組みの構築を訴えている。


正義のために! 父子一体の闘争

語らいでは、事務局長の父君であるムスタファ・エルバラダイ氏の業績が話題に。

会長 事務局長の父君は偉大な弁護士であられました。まことに高潔な方であり、エジプトで抑圧が続いた時代にあって、民主主義と自由のために勇敢に立ち上がり、正義の声をあげられました。そのため、当時の権力からさまざまな圧迫を受けたとうかがっています。しかし、その後、名誉回復が行われ、父君は、歴史上の偉人として尊敬されています。

――ムスタファ・エルバラダイ氏は1958年から17年間にわたって、エジプトの弁護士協会会長として活躍。1974年には、アラブ弁護士連盟の会長にも選出された。教育にも尽力し、弁護士高等専門学校の設立も提唱している。また、エジプトを代表する弁護士として、さまざまな国際会議でも活躍。民主主義の確立と人々の権利と自由のために戦った。弁護士協会に対する侮辱を許さず、検事総長を議会で謝罪させたこともあるという。こうした行動から、氏は、人間の尊厳の基礎をなす“権利”と“自由”の擁護と確立に貢献した人物として賞讃されている。

会長 事務局長は、こうした父君の崇高な強さを厳然と受け継いでおられます。まさに“父子一体”の闘争です。複雑で困難な国際情勢のなかにあって、事務局長は、巨大な圧力にも怯まず、平和と正義の行動を貫かれた。世界の良識が、事務局長を讃嘆し、信頼しています。偉大な父君の思い出を、何かお聞かせいただけますでしょうか。

事務局長 一つ思い出すことがあります。父からは“自分自身の良心に従って生きるのだ”ということを学びました。自分の良心に妥協したら、自分の魂に対して妥協することになる。魂を裏切ることになる。どんなに状況が困難であっても、自分の内なる声に耳を傾けることだ。自分の内なる強さによって立つならば、必ず勝利がもたらされる。どんなに状況が困難で、それが長く続いたとしても、必ず勝利できる――父は、そのように教えてくれました。

SGI会長は、深い感銘を込めて語った。「私の胸には、事務局長の父君の次の言葉が残っています。『私たちは、真実と正義と自由によって生き抜くのだ』――これは、弁護士として戦う父君が、常に語っておられた言葉だとうかがいました。また、父君は『私は、人間の権利を守るために生まれてきたのだ』とも述べておられる」

さらにSGI会長は、父君であるムスタファ・エルバラダイ氏の同僚が、氏について、「高度な人間性と実直さ、取り繕わない謙虚さを持っている」「権利によって、権利のために、という確固たる信念を持ち、自身の意見を述べる勇気、独裁政治に対する断固たる反抗の精神に貫かれていた」と述べていたことに言及。父君への尊敬の心を伝えた。

会長 本日は、「人間教育の母」であられるアイ−ダ夫人も、ようこそ、おいでくださいました。また、在ウィーン国際機関日本政府代表部の天野之弥大使ご夫妻も、ご多忙のところ、心から感謝します。さらに国際原子力機関の皆さま、外務省の皆さまも、本当にありがとうございます。ここ聖教新聞社には、エルバラダイ事務局長とご縁のあるガリ国連前事務総長もお見えになりました。<ガリ氏もエジプト出身で、エルバラダイ事務局長はガリ氏のもとで勤務した経験がある> また、南アフリカのマンデラ前大統領(ノーベル平和賞受賞者=93年)、旧ソ連のゴルバチョフ元大統領(同=90年)、コスタリカのアリアス大統領(同=87年)、ケニアのマータイ博士(同=2004年)も来訪され、大いに語り合いました。きょうは、「不屈の平和の創造者」をお迎えでき、これほどの光栄はありません。この席をお借りし、改めて、事務局長と貴機関のノーベル平和賞のご受賞をお祝いしたい。

事務局長 ノーベル平和賞の受賞は、重い責任を伴うものです。人々から、大きな期待が寄せられます。一人の人間として、できることは限られていますので、私は大変な重責を感じています。

会長 謙虚なお言葉です。また、事務局長の信念と良識を一層、深く感じました。


ロートブラット博士の思い出

会長 私は、核兵器の廃絶のために人生を捧げられたジョセフ・ロートブラット博士(パグウォッシュ会議名誉会長)と対談集を発刊しました。<『地球平和への探求』。博士は95年にノーベル平和賞を受賞>博士は昨年8月、96歳で逝去されるまで、対談集の完成に全力を注いでくださいました。じつは、このロートブラット博士から、私は、事務局長の偉大なご活躍を、うかがっておりました。特に2年前、韓国のソウルで行われたパグウォッシュ会議の総会で、事務局長が重要な基調講演をしてくださったと、今は亡き博士が最大に感謝しておられました。博士がご存命であれば、どれほど事務局長の栄誉を喜び、讃えられたことでしょうか。

事務局長 ロートブラット博士との間には、いまだに大切な、誇りとする思い出があります。それは、イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」紙に、博士との共同執筆で論文を掲載したことです。私たち二人は、全く違った背景を持っていました。彼は物理学者であり、私は法律家。宗教も違います。そして、彼は私より少し(笑い)、年上です。<34歳上> しかし、その二人が全く同じところで一致したのです。それは、核兵器は廃絶されなければならない。平和は軍備に依存するものではない――ということでした。私は2週間前にも、ある大学で、こう講演しました。「人間としての権利は、国家の主権に優先されなければならない」と。


「希望」はある!

会長 事務局長がノーベル平和賞の受賞スピーチで言及されているように、かつては絶対に崩れないと思われていた「奴隷制度」なども、今では廃止されました。それと同じように、核兵器も、人間がつくり出したものである以上、廃絶できないわけがない。この「希望」を、私は事務局長と深く、強く共有する一人です。明年は貴・国際原子力機関の発足から50周年。私どもの「原水爆禁止宣言」からも50周年です。<1957年9月8日、戸田第2代会長が横浜で発表。SGIの平和運動の原点となった> 私たちは、この21世紀に、「核の脅威のない世界」を実現しなければなりません。この点、事務局長はどういう展望をお持ちでしょうか。

事務局長 もちろん、核の脅威をなくすためには、もっともっと努力が必要です。今の核をめぐる現状に慣れてしまうのではなく、また、核を廃絶しただけでは不十分で、今と違う形で、平和と安全を守る方法を見いだしていかなければなりません。すなわち、(核や軍事力による安全保障でなく)人間を中心とした、人間のための安全保障という枠組みをとらなければ、平和を守ることはできないのです。ヨーロッパは25カ国による連合(EU)を実現しました。もはや、欧州諸国が互いに戦うことはないだろうと言われています。このEUと同じように、全人類が一つとなる共同体を実現すること。これが私の夢です。

会長 私はかつて、ライナス・ポーリング博士と対談集を発刊しました。<『「生命の世紀」への探求』。博士はノーベル化学賞・平和賞を受賞> 博士は宣言されました。「核兵器という悪の力よりも、もっと偉大な力がある。それは人間の心だ」と。私は事務局長の中に、博士と共通する信念を見いだします。私も全く同じ信念です。


分かち合う心を教育で教えよ

会長 事務局長は、青年をこよなく愛される指導者です。青年を愛せるか否か。「権力者」と「指導者」を分けるのは、この一点です。権力者は、青年を上手に使おうとします。口先でどれほどきれい事を言っても、その心は青年利用です。事務局長は昨年の8月、エジプトでの講演で青年に呼びかけられました。

「世界に打って出るためにも、青年は、真剣な努力と誠実さが肝要である。目的に達するまで忍耐せよ!青年が、我々の達したものよりも、さらに偉大なものを実現することを期待している」

大変、感動しました。大切なのは「誠実」です。「努力」で光ることです。誠実でない人間は、私は大嫌いです。青少年の育成を、どうするか、それが今、最も大きな課題です。

事務局長 教育については、私の妻に聞いてくださったほうがいいかもしれません(笑い)。妻は、長年、幼稚園の先生をしていました。ともあれ、「教育は未来への鍵」だと思います。とくに幼児教育は人間の発達にとって大きな鍵です。子どもたちに奉仕すれば、それはすべて自分に返ってきます。それが人間の根本的価値観です。正直であること、自分がほかの人にしてもらいたいと思うように人に接すること、自分の仕事にまじめに取り組むこと――これらを教えることが大事です。私の妻は、子どもに教育すべきは「分かち合う精神」だと言っています。つまり、「どうやって分かち合うか」を学ぶのは、「どうやって共存していくか」を学ぶことだからです。それはすなわち、「どうやって生存していくか」という問題です。「分かち合う」ことを学べば、人に公平に接していけます。人々に公平に接していけば、平和になっていくのです。

会長 素晴らしい哲学です。わかりやすい言葉で、教育と人類共存の哲学を語ってくださった。


青年の「自覚」が私たちの「未来」

会長 事務局長が、後継の、未来に生きゆく青年たちに一番、訴えておきたい言葉は何でしょうか。

事務局長 それは、どうか「『私たちがやった以上のこと』をやってほしい」という一言です。残念ながら私たちは、さまざまなかたちで、彼らの期待を裏切ってきました。しかし、若い人たちは今、チャンスを持っています。グローバル化(地球一体化)によって、世界を駆け巡り、お互いにコミュニケーションをとり、今まで以上に、お互いに影響を与えることができる環境が整っています。一つの大きな「人類家族」である、と自覚できる環境にあると私は思っています。私自身、世界中のどこにいても、まるで自分自身の故郷にいるような思いがします。どんな肌の色であれ、人種であれ、宗教であれ、私たちには、同じ希望があります。同じ志があるのです。若い人々がそのことを自覚し、気づいてくれれば――。これが私たちの「未来」であり、「唯一、人類が救われる道」なのです。


「会長の平和探求の姿勢に感銘」

――IAEAを、世界の人々は「核の番人」と呼ぶ。IAEAこそ核拡散を防ぐ実行組織であり、核なき世界への現実的力であるからだ。利害のぶつかり合う国際政治の最前線に身を置きながら、核廃絶という理想を追い求めてきた事務局長。それだけに、「人物」を見抜く目は鋭い。「今回、来日する機中でもSGI会長の著作を読んでおりました。私は、会長の“平和探求の姿勢”に共感しています」と語る事務局長に、真心からの謝意を述べるSGI会長。多忙の合間を縫っての語らいは、瞬く間に過ぎた。芳名録に事務局長は綴った。

「きょう、この場所を訪れたこと、創価大学の名誉学位をいただいたこと、そして池田会長と対話の機会を持ったことは、私の名誉です。池田会長の、平和のための行動に素晴らしき未来あれと願いつつ モハメド・エルバラダイ」

事務局長夫人も、ともに芳名録に記し、分かれる間際までSGI会長夫人に対して「本当に素晴らしい機会をつくっていただき、ありがとうございます」と笑顔で。学会青年部の代表が待つ1階ロビーには、アメリカ創価大学の航空写真が掲げられていた。その前で、しばし歓談。「アメリカ創価大学にも、ぜひ、いらしてください」とSGI会長。事務局長は、アメリカ創大のハブキ学長とも固く握手を交わした。

雨上がりの柔らかい陽光が差す本社前庭で、「お元気で」「健康に気をつけてください」と声をかけあうSGI会長と事務局長。次の予定である講演会場へ向かう事務局長夫妻一行の車を、SGI会長夫妻は、創価の「未来」であり「希望」である、多くの青年たちとともに見送った。

会見には国際原子力機関の谷口富裕事務次長、ジェフリー・ショー事務局長特別補佐官、レーバン・ラマー・コブレンツ氏、外務省の小溝泰義国際原子力協力室長、不拡散・科学原子力課の榎下健司氏、創価学会の原田会長、創価大学の若江学長、山本副学長補、創価女子短大の福島学長らが同席した。

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